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レ・ミゼラブル

 
『宗教的経験の諸相』で扱われる「回心 (conversion)」という現象を、テキスト以外で理解できるものを探していました。
ヴィクトール・ユゴー原作の『レ・ミゼラブル』は、ヨーロッパの回心文学(そんな名詞があるのかは知らない)の典型例の一つでしょう。
 
舞台は19世紀フランス。飢えた妹のためにパンを一切れ盗み、長期間投獄されていた主人公ジャン・ヴァルジャンは、釈放後に放浪生活をします。
その中で聖職者のミリエル司教に出会うことにより、彼は回心現象を体験します。そしてその後、彼はその信仰を証しするような人生を歩む、そんな話です。
 
ここでは 二度生まれ型の分裂した自己 → 絶望による自己放棄→ 回心による人格の変化 → 聖者性 というジェイムズが『諸相』で描いた回心前後の過程が物語となっています。
 
原作は大部ですので、まずはブロードウェイ・ミュージカルを原作とした2012年の映画版がおすすめです。
映像で「回心」という現象のイメージが得られるのは、とても良いですね。ヒュー・ジャックマンとラッセル・クロウの絡みも良い。音楽も良い。